N
時流ノート

Z李の素顔と正体に迫る——謎のインフルエンサーの実像とは

Author

David Mccullough

Updated on July 19, 2026

SNSという舞台には、時として正体不明のまま巨大な影響力を持つ人物が現れる。Z李(読み:ジェットリー)はその最たる例だ。約90万人のフォロワーを擁し、裏社会の暴露から慈善活動まで幅広く動き回ってきたこの人物の素顔は、長年ベールに包まれていた。ところが2024年11月、一つの逮捕劇がその謎を一気に引き剥がすことになる。

Z李 新宿租界 インフルエンサー

Z李とは何者か——名前の由来と最初期の活動

Z李(ジェットリー、1982年生まれ)は日本の実業家・インフルエンサーであり、公営ギャンブルの予想などを行うオンラインサロン「新宿租界」の代表。本名は田記正規(たき まさのり)で、各SNSアカウントは複数人が運営に関わっているとされ、インフルエンサー集団とも紹介されている。

名前の由来はシンプルだ。読みは「ジェットリー」であり、元ネタはカンフー・アクションで世界的に有名な俳優ジェット・リー。アイコンも映画『キス・オブ・ザ・ドラゴン』(2001年)に出演したリュウ・ヤン・スイヤンをモチーフにしたものとなっている。名前から中国人と誤解する人は多いが、名前から勘違いする人が多いが生粋の日本人だ。

2018年頃にTwitterのアカウントを開設。俳優のジェット・リーを捩った名前やアイコンから、当初は中国人説も流れていた。公営ギャンブルや裏社会情報などの投稿が注目され、約1年後には競馬、競艇、競輪、オートレースの情報提供を行うオンラインサロン「新宿租界」を組織した。半グレめいた暴露系・モノ申す系インフルエンサーとして、約90万人のフォロワーを擁した。

Z李の素顔——長年謎だったプロフィールの実態

Z李の素顔を知りたいと思うのは、多くのフォロワーが共有してきた疑問だ。Z李のプロフィールは非公開な部分が多く、正体についてはほぼわかっていなかった。メディアなどへの出演は一切なく、過去に素顔を晒した形跡も一切ないため、Z李の素顔を知る人はほとんど居ないと考えるべき状況だった。

彼は「公営ギャンブルの予想集団『新宿租界』のボス」「トラブルシューター」「実業家」「慈善活動家」「探偵」「Twitterのフォロワー約75万人超の人気インフルエンサー」など多彩な肩書を持ち、小説『飛鳥クリニックは今日も雨(上)』(扶桑社)を発売するなど作家としても活動してきた。しかし、年齢や血液型をはじめ詳しい経歴は一切不明だった。

自分自身については、ジョークとも本気ともつかぬ発言を繰り返すのがZ李のスタイルだ。東大医学部卒やゴールドマンサックス勤務などの"撹乱ネタツイート"もあり、より謎を深めてきた。一方で生い立ちは「普通の母子家庭」と答えており、父親のいない環境で育ったようだ。実際のところ、人生でこれまで何度も本当にご飯を食べられないことがあり、その経験がホームレスへの炊き出しなどの活動につながっていると語ったこともある。

知人の作家・草下シンヤ氏は、Z李をひと言でこう表現している。「世直しギャンブラー」という言葉がZ李を表すのに使われており、これが彼の本質をよく言い表しているとも言われている。

新宿租界 オンラインサロン ギャンブル予想

新宿租界とは——ギャンブルサロンの実態

Z李の活動の核心は、オンラインサロン「新宿租界」にある。新宿租界は競馬・競艇・競輪などのギャンブルで稼ぎたい人が多く参加するオンラインサロンであり、Z李はリーダーを務め、主に競馬予想を担当している。

新宿租界は競馬、競輪、競艇など公営ギャンブルの予想をオンラインで行う予想家集団であり、Z李さんの他に12人のメンバーで構成されており、Z李さんは皆からボスと呼ばれている。月額は8,600円で、公営ギャンブルの予想情報を提供する仕組みだ。

ただしその活動は単なるギャンブル予想にとどまらない。新宿租界は単なるギャンブル予想の場を超えて、「裏社会の情報交換の場」としての役割も担っていると噂されており、Z李氏を中心に信頼と影響力を持つコミュニティとして多くのメンバーから支持されてきた。

暴露系インフルエンサーとしての顔——告発と炎上の歴史

新宿租界の外でも、Z李の名前はしばしばSNS上の"事件"と共に語られてきた。YouTubeチャンネル「令和の虎」メンバーの賭けポーカーを暴いたり、ガーシーのBTS詐欺を晒したりと、数々の暴露や告発を行なっていることで有名だ。

NHKの番組とYouTubeに出演しているが、いずれも顔出しはしていない。NHKの番組「クローズアップ現代」で、SNS上でのプレゼント詐欺について専門家として取材に応じた。また週刊SPAに掲載される内容は歌舞伎町、詐欺師、暴力団、賭博、闇バイトといった裏社会のネタが多いのが特徴だ。

こうした活動が積み重なり、Z李は「ネット界のダークヒーロー」と呼ばれるようになった。詐欺に騙された被害者や闇に葬られた事件の被害者などからの相談やタレコミが多数寄せられており、どうしても許せない事件や権力で揉み消す系の悪事には、自身が危険かもしれないのに告発するというスタイルがカリスマ性につながっている。

慈善活動という意外な一面——炊き出しと保護猫カフェ

裏社会との関係が取り沙汰される一方で、Z李には慈善活動家としての顔もある。2020年から新宿や渋谷のホームレスへの炊き出しを積極的に行っており、ボランティアで友人のラッパーや格闘家、YouTuberが参加していた。料理には凝っており、2025年2月には簡単でお腹いっぱいになる男メシ料理を紹介するレシピ本も出版した。これらの資金は新宿租界の収益の一部から充てられている。

Z李氏は2021年8月2日にオープンした新宿区西大久保の「BAKENEKO CAFE」という保護猫を集めた「保護猫カフェ」を経営している。普通の猫カフェとは違い、保護猫たちの場所であり里親を募集する場だ。また猫好きであり、捨て猫や保護猫を集めた猫カフェ「BAKENEKO CAFE」を運営していた。馬主でもある。

裏社会の情報を流しながら弱者を助ける——この矛盾こそが、Z李という人物への関心が尽きない最大の理由だろう。

新宿 炊き出し ボランティア活動

2024年11月の逮捕——素顔が公になった瞬間

長年謎に包まれていたZ李の素顔が、ついに広く知られることになったのは2024年秋のことだ。顔写真が公開されたのは、2024年11月13日の深夜に逮捕された際のことだ。この時、Z李さんは住居侵入の疑いで警視庁に逮捕され、その後、報道によりZ李さんの本名と顔写真が公開された。具体的には、逮捕されたのはZ李さんこと田記正規容疑者であり、彼の顔写真はメディアを通じて広く知られることとなった。

逮捕の理由は、Z李さんが所有していたバイクが盗まれ、それに対する報復として、犯人の自宅に無断で侵入したことだ。

この逮捕は単独ではなく、グループでの行動だったことも判明した。報道では警察から住居侵入の疑いで「田記正規」「沢口孝侑」「宿輪幸治」を含む5人が逮捕されたと伝えられ、逮捕時の映像も流され、闇に包まれていたZ李の本名と顔写真が全国に公開されることとなった。

過去にZ李が青汁王子の依頼でライバル企業に対する街宣車攻撃を行った事件があり、その裁判の判決文で「田記正規」という名前が登場していた。このことが以前からZ李の正体として噂されていたが、今回の逮捕で名前が一致し、噂が事実だったことが裏付けられた。また、田記氏は「ExceedAndExcel株式会社」の代表取締役を務め、今回の報道では匿名・流動型犯罪グループのいわゆる「トクリュウ」との関係も示唆された。

再逮捕と続く事件——その後の展開

最初の逮捕で終わらなかった。「Z李」こと田記正規容疑者が、クラブのセキュリティに暴行を加えた疑いで12月5日に再逮捕された。この一件は2023年12月に行われた内容で、住居侵入の時と同じように過去の容疑に対する逮捕だ。併せてラッパーである「リッキー・ダディ・ダーティ」こと下田ムトア容疑者も逮捕されたとのこと。

Z李名義で刊行した小説はLenimoでのドラマ化も予定されていたが、docomoは「現在、報道の事実関係を確認している」とコメントし、その後、配信延期を発表した。ネット界隈に留まらず、エンタメ業界にまで波紋が広がったわけだ。

また、上記の通り複数で運営しているがゆえ、田記の逮捕後もXアカウントの更新は継続された。これを受け、フォロワーの間では「いつもと違う」「別人が書いている」といった指摘が飛び交った。

Z李をめぐる噂と真実——反社説・公安説・複数人説

Z李という存在が長く謎だったからこそ、ネット上では様々な憶測が飛び交ってきた。反社会的勢力との関与を示す噂、逆に警察の公安関係者ではないかという説、さらには複数人が同一アカウントを運営しているという説——。

警視庁はZ李を「トクリュウ」の一員の可能性があると捜査を進めていたとされる。しかし一方で、警視庁はZ李を匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)ではないかとして警戒を強めていたが、後に関係ないことが判明した。

Z李は漫画『新宿スワン』に登場する滝マサキのモデルになっているということも知られており、滝マサキは一ノ瀬一家組長とトラブルになり横浜を追われて歌舞伎町に疎開するという設定がある。フィクションと現実が交差するような、独特の"伝説"がZ李という人物を彩り続けてきた。

Z李の素顔が示すもの——ネット社会の光と影

Z李という存在は、現代のSNS社会を映す鏡でもある。正体がわからないことでこれだけの人気を誇っていた一方、正体がわからないが故に反社や半グレなど、あらぬ噂が立ち続けてきたとも言える。匿名性が生む神話と、それが壊れた時の衝撃——Z李の一連の騒動はその両面を鮮やかに見せつけた。

2025年3月31日には、自身のX広告収入を公開し、かつては半月で10万円ほどだった収入が3万円ほどまでに下がっていることを明かした。逮捕後も更新が続くアカウント、下がり続ける収益、それでも離れないフォロワー——Z李という現象はまだ完全には幕を下ろしていない。

謎に包まれた素顔、慈善活動と裏社会の間で揺れるイメージ、そして逮捕によって公になった本名と顔。Z李とは、SNS時代が生み出した最も複雑な「人物像」のひとつだ。ファンにとってはダークヒーロー、批判者にとっては危険人物——どちらの見方も、この人物の一側面に過ぎないのかもしれない。